失われし食と日本人の尊厳

プロローグ(その6)

《これから述べていく道筋》
 この本の一貫した論旨の中核は次の通りです。
 現在、この日本を覆っている広範で重篤な身体と心の病は、戦後急速に日本の食から致命的といえるまでに様々の栄養素が幅広く欠落してきたことに最も大きな原因があるのではないか。
 十分な量の食べ物がありながら、日本の産物やそれを使った料理などから、栄養素はどのようにして欠落してきたか。先進国の中で類例のないほどに劣化してきた日本人の身体と心は、以前の様に再び健康と尊厳を取り戻すことができるのか。私はそれは可能であると思います。
 しかし回復を可能にするためには、まず現実の真の状況を直視し、理解しなければなりません。読者には日本人としての食の価値観、常識がことごとく否定され、不快な時間となるかもしれませんが、あなたの子供達のため、日本の未来のためにしばらくお付き合い下さい。

>>>

続きを書籍でご覧になりたい方は、

コチラからご注文出来ます。

プロローグ(その5)

《おいしさとは何か。おいしいものは身体によく、幅の広い栄養素を豊かに含む。最後の判断は私のおいしさ》
 皆さんは「おいしさ」「まずさ」とは何だと思いますか。
 おいしさ、まずさの感覚は、悠久の時間をかけてDNAに積み上げられてきた、食物の経験に関する膨大な情報によってもたらされると私は考えます。その情報の中には、摂ることによって細胞が良い状態に保たれたことや、逆に不調をきたした時のものなど様々のものが蓄積されています。
 今食べたものから得た様々の物理的、化学的反応の多くが、DNAの中の良い食べ物に対する情報と多くが重なり合った時に、安心と満足感として得る感覚が「おいしさ」であり、悪い食べ物に対する情報と重なり合った場合に、もう食べてはいけないという「警告と失望」の感覚として「まずさ」を感じるのだと思います。
 DNAなんてなんとあやふやなことを、と思われるかもしれませんが、私達の行動はこれに深く規制されています。特にまだ「人間としての社会」を知らない乳幼児は、動物の本能そのものの鋭敏な識別能力を持っています。離乳食を初めて食べる時には、食べ物の経験はないはずなのに、まず注意深くじっと匂いを探り、それからやっとほんの少しだけ口に入れ、さらに注意深く探ります。それはDNAの記憶の情報がそうさせるのです。赤ちゃんはよほど切羽詰まらない限り、身体に良くない、あるいは良いとはいえないものは決して食べようとはしません。身体に良いものを必要な量しか食べないのです。
 本当においしいものには、細胞を健康にし再生させるのに十分な栄養素が含まれています。この本で述べていくことは、私の「おいしさ」の感覚によって判断された様々の事実をつなぎ合わせたものといっても過言ではありません。まさに「うまいかうまくないか」がすべてなのです。しかし、おいしさには本物のおいしさと、時代の雰囲気などが作り出す「偽りのおいしさ」もあることを忘れてはなりません。

プロローグ(その4)

 今の栄養学や医学は食を語る資格も能力もありません。一介の菓子屋が何をおせっかいで僭越なことを、と思われるでしょう。しかし現在蔓延する様々な病気は、1つ1つを個別のものとして見ても決して真の病の源を見つけることはできません。様々の現象を有機的に全体的に見なければなりません。それによってのみ、真の状況が明らかになってきます。医者でもない栄養学者でもない、食べ物を作り続けてきた菓子屋の私だからこそ、全体がつながって見えるのです。
 私は実際に食を作り、フランス菓子作りの中で人間が求める真のおいしさを突き詰めてきました。そして真のおいしさは、人間の心身にどのような変化をもたらすかを見つめてきました。
 私にはこれまでの経験を有機的に結びつけ、巨視的に栄養素と体の状態の関係を推測する、鮮烈なイマジネーションがあります。食材や料理からの多岐にわたる栄養素の著しい欠落に対し、実際的で有効な手段を与え得るのは、この日本では本書だけであるとあえて断言します。
菓子屋が考え得るだけ考えた「身体に取って必要な栄養」
 昨今は、微量栄養素の食材からの脱落が問題視され、これまで私もこれに力点をおいて考えてきましたが、微量栄養素のみならず、全般的な栄養素の欠落が今の状況を生みだしていると考えます。私達が日々摂取する食物には次のような栄養素が含まれています。

【三大栄養素】炭水化物、脂質、タンパク質のこと。身体のエネルギーになり、日々十分な量を摂取しなければならない。
・ 日本人の平均的カロリー比(炭水化物60%、脂質25%、タンパク質15%)
・ 日本人の必要カロリー量(20〜30歳、安静時の基礎代謝量)男1800キロカロリー、女1400キロカロリー。1キロカロリーは水1kgの温度を1度上げるのに必要な熱量。
・ それぞれ同重量で得られるエネルギー比(脂質:糖質:タンパク質=2:1:1)。
脂質はエネルギー値が高く他の2つの2倍。
①炭水化物
・食物繊維と糖質を合わせて炭水化物という。
・食物繊維は体内では吸収されずエネルギーにはならない。便通などをよくする。
・糖類はご飯やパンなどの穀物類とイモ類の澱粉や果物(果糖)、牛乳(乳糖)、お菓子(グラニュー糖、蔗糖)に含
 まれる。日本人にとって主たるエネルギー源である。
②脂質
・脂質は肉や魚介類、調理油などに含まれている。糖質と同じく主たるエネルギー源である。
・脂質は90%を占める中性脂肪とリン脂質、コレステロールからなる。
・体内でエネルギーになるのは中性脂肪である。(身体の中にある)脂肪細胞に貯えられる。
・体内で合成されない必須脂肪酸(DHA:ドコサヘキサエン酸、IPA:イコサペンタエン酸、リノール酸)は、虚血性心疾患、認知症のリスクを下げる。これらは食物から摂取しなければならない。さんま、いわし、さばなどの青魚に多く含まれる。
③タンパク質
・ タンパク質の素となる多種類のアミノ酸は、肉、魚介類、牛乳、乳製品、卵、豆、豆製品に豊富に含まれる。野菜 にも多種類のアミノ酸が含まれる。ニンニク(アルギニン)、ピーマン(グルタミン)、アスパラガス(アスパラギン)など。
・人間の身体のおよそ200種60兆個の細胞の1つ1つが、およそ10万種のタンパク質で作られる。筋肉、骨、骨格、皮膚などすべてを作る
・ 人間の身体のタンパク質は最大20種のアミノ酸が様々に組み合わされた集合体であり、これらの様々の組み合わせにより10万種のタンパク質ができる。このうち体内で合成されずに食べ物から摂取しなければならない必須アミノ酸は9種類ある。また、この20種のタンパク質は全種類が十分補給されなければなりません。このうち19種類が十分な量として100ずつ得られたとしても、1種類が10であれば全体の結果は10しか得られないとあります。しかしこの不足分の90は他の食材で補えば100の効果が得られます。現在の日本の食材や料理に含まれるタンパク質の種類と量は以前から比べれば極端に少なく、ばらつきが大きくなっています。このばらつきを埋めるためには出来るだけ多種類の食材を摂る必要があります。以前は30 種類と言われましたが、現在はもっと多種類の食材を摂らなければ、タンパク質の種類と量の不足を補うことが出来ません。
・ 血液や代謝を進める酵素、免疫細胞、生体機能や感情をコントロールするホルモン、生命の設計図である遺伝子までも作る。
・ 新陳代謝。すべての細胞は時間がたつと老化が進み、本来の機能を保てなくなる。常に古いものを分解し、新しいものと取り替えている。(筋肉や皮膚も1日3〜4%のタンパク質が入れ替わる)

【微(少)量栄養素】
 三大栄養素から比べれば必要量はかなり少量ではあるが、動物の成長や生命維持のための生理機能に重要な作用をする不可欠の栄養素で、ビタミンとミネラル(無機質)から成る。
 ただ、これらは本当に微量で良いのではありません。特にビタミン類は私の経験的な感覚からすれば、やはりそれなりの量は必要と考えています。この点についてはおいおい次章以降で述べていきます。

①ビタミン
・ 脂溶性ビタミンのA、D、E、Kなどと水溶性のB群、Cなどに大別され、生体の正常な発育や物質代謝を調節し、生命活動に重要不可欠な働きを持つ有機化合物である。多くは動物体内で生合成されていないので、食物から摂取 しなければならない。欠乏や過剰により種々の障害が起こる。
・ ビタミンの摂取不足によってビタミン欠乏症が生じる。
(例)
・ ビタミンA群 
A1、A2があり、脂溶性(肝油、卵黄、バターなどに多く含まれ、植物のカロチンも体内でこ
れに変化する)。欠乏すると発育不良、夜盲症、角膜皮膚の乾燥などを起こす。
・ ビタミンB群 水溶性B1、B2、B6、B12その他がある。B1は米ぬか、酵母、肝臓などに多
く含まれ、糖質代謝に関与。欠乏すると脚気、神経炎などを起こす。B2は米ぬか、酵母、
肉などに含まれる。欠乏すると口角炎、舌炎、皮膚炎、結膜炎などを起こす。
・ ビタミンC 水溶性。新鮮な野菜、果物や緑茶などに多く含まれ、熱に弱くすぐ分解してしまう。アミノ酸の代謝に関与している。欠乏すると壊血病を起こすことはよく知られている。
②ミネラル(または地殻中に存在する鉱物)
・ ごく少量で生理機能に重要な働きをする。カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン、硫黄、鉄などの無機塩類。鉄や亜鉛などは必須微量元素と言われる。ミネラルは生理作用や酵素反応、代謝調節作用に深く関わっている。
 正常な生命活動を維持するためには、日々かなりの量が必要な三大栄養素である糖質、脂質、タンパク質と共に、三大栄養素から比べれば少量ではあるが、量の十分な幅の広いビタミン類、ミネラル群が必要です。
 主たるエネルギー源である糖質や脂質を単にその日の身体を動かすためのカロリー分摂取すれば十分なのではありません。身体中のすべての細胞を作り、そして動かす10万種のタンパク質を作り出す素となる必須9種を含む20種のアミノ酸や、ビタミン類、ミネラルが不足なく十分に食べ物によって補給されなければなりません。
 また後述するように、これら成分間の精緻で複雑な化学反応を円滑に行うためには、豊かな幅の広いミネラルとNaCl(食塩)からなる海塩も、同時に十分な量必要です。しかし国産の食べ物には集約的化学農法、酪農、畜産や、間違った嗜好、間違った料理法などによって、これらの栄養素の中のすべてのものが以前から比べれば、戦後急速に脱落し、致命的なまでに欠落しています。
 その結果、細胞は本来の機能を維持できず、不調に陥りこの日本を広く覆う心と身体の様々の病が蔓延しているというのが、私の考えの中核となっています。

プロローグ(その3)

 子供が食べることが嫌いなはずはありません。本当においしいものなら、食べないわけがないのです。今までお母さんが与え続けてきた食べ物が、子供達の身体が望んでいない生命の摂理に反した食材や料理だった、それだけのことなのです。細胞が求めている幅の広い栄養素を十分に含んだ、本当のおいしさを持った食べ物、料理は確実に子供
達の食べることへの渇望とエネルギーを揺り動かします。
 後に詳しく述べますが、この本の発刊から3、4ヵ月もした頃から、様々な病気からの改善、快方、完治が、私共の耳に届き出したのです。あちこちの病院に行っても、何をしても少しも効果がなかった病状が、日々のご飯で治ってしまうのですから、誰もが驚きますし、聞いただけでは誰も信じてくれません。
 たとえばずっとアトピー性皮膚炎で苦しんでこられた方々には「そんなもんで治ってたまるか」という変な意地めいたものがあるように感じます。勧めてもなかなか『ごはんとおかずのルネサンス』の料理を食べようとはしてくれません。でも何かのきっかけで食べ始めると、あっという間に驚くほどの効果が現れます。さらにいわゆる難病指定の「潰瘍性大腸炎」や「子宮内膜症」にも信じられない効果をもたらしたのです。
 私達の食に対する考え方と実践においては、すでに大きな真実に基づく実績があるのです。日本人の明日に、真の健康と尊厳をもたらすという確実性があります。あとはこの国の多くの人達が、どれだけこの真実に目をむけてくれるか、それだけのことなのです。

プロローグ(その2)

 食べ物は、音声による言葉よりももっと本質的な人と人を結ぶ言語なのです。私達日本人はこのことをすっかり忘れてしまいました。そして実に多くの「してはならないこと」を食材と料理にし続けてきました。
 このため今の日本では、家族の健康を願い、お母さんが心を込めて作ったせっかくの料理も、子供の心と身体に元気と喜びを与えることはできません。子供の心と身体は、母の愛をより深い生命の摂理に基づいた愛として受け取ることができないのです。これでは子供は健やかな寛容さを持った心に育つことはできません。かつては家族同士や人と人を結びつけるものであった料理が、この日本ではむしろ1人1人の心を疎遠にしているのです。

 本来豊かな栄養素を持った日本の食べ物は、その栄養素をそぎ落とされ、悠久の時間をかけて作られてきた、人間としての精巧な脳や身体の組織を育むことができません。人と人のつながりを、人の心の機微を認知するだけの理知的な精神を作り上げることができません。その結果、家庭内暴力、いじめ、引きこもり、自殺などの自らの人生を否定する道しか選べない若者達が増えているのです。
 彼らは不幸です。これは彼らが選んだ道ではありません。私達大人が、選択の余地のない唯一の道として子供達に押しつけた結果なのです。
 私達はまず、現在の日本の「食」を取り巻く真実の状況を知らねばなりません。そしてその真の姿は、大多数の人が何とはなく考えているものとまったく正反対の状態にあることに、驚かれるでしょう。
 日本の食の現状は、飽食の時代と言われながらこれまでの世界の歴史の中でも類例がないほどに、まさしく危機的状況にあるのです。
 それではこの様な絶対的な危機にある日本の食に未来はあるのでしょうか。
 私共は2003年に『ごはんとおかずのルネサンス』を発刊しました。それ以前なら、私はもう手遅れだと答えていたでしょう。しかし発刊後、『ごはんとおかずのルネサンス』の料理を実践された方々からの知らせと交流は、私達の予想をはるかに超えたものでした。あまりにも凄すぎる反応でした。
 食べることが嫌いな子や、野菜や味噌汁の大嫌いな子が、『ごはんとおかずのルネサンス』の料理を初めて作ったその日から、一生懸命に食べ始めたのです。「奇跡だ」と書いてこられたお母さんもいました。甘いだけの肉じゃがが大嫌いな子が、もりもり食べて「ぼくは肉じゃが好きだったんだ」と言ったとか、お母さん達の嬉しい声が届いてきたのです。

プロローグ(その1)

かつては存在しなかった様々の心と身体の病がこの国を重く覆い尽くしています。
 家庭内暴力、親を殺す、学校などでのいじめ、学力低下、引きこもり、仕事に就く意欲とエネルギーを失った若者達、そして自分より弱い人達を助けようともせず、むしろ彼らをいじめることによって、この日本に生きることの不安とみじめさを忘れようとする卑屈さそのものの考え方、自分のことだけしか考えられないあまりにも稚拙な精神、お金だけを唯一の価値と考える地に堕ちてしまった倫理観。
 糖尿病、高血圧、動脈硬化、心臓病などが高年齢層で一層の広がりをみせ、さらにかつては若年層とは無縁だったこれらの疾病が今、確実に若者の身体を蝕んでいます。
 私達が子供の頃は聞いたこともなかった「花粉症」そして「アトピー性皮膚炎」の患者は1000万人に迫ると言われています。
 このままでは日本の子供達には、今よりさらに不幸な未来しか待ち受けていないように私には思われてなりません。
 私は今まで自分がたどってきた人生のすべての軌跡をかけて、また、2003年の『ごはんとおかずのルネサンス』の発刊からこれまでの間に、この本の料理法を実践された多くの方々との交流の中で明らかになった様々の事実に基づき断言します。
 これらの肉体的、精神的荒廃は、私達が日々摂取する食べ物や料理からの栄養素の致命的なまでの欠落に深く起因しているのです。
 これから詳しく述べていくように私達は戦後の急激な経済拡張主義の下に、異常な食の世界へひとりひた走りに進んできました。これほど「食べることの意味」について、食べ物が私達の身体に及ぼす作用を忘れ軽んじ、その目的を見失ってしまった国民は、他にはないと思います。まさしく私達日本人は人類が今までに経験したことのない「食による人間性の崩壊」へ向かっています。
 しかし私達が生物で、そして人間である以上、食の本来の意味を絶えず問い続けることは、人間としての尊厳を保ち続けるために決して忘れてはならないことなのです。
 私達は精緻な機能を十分に備えた体内の細胞、組織、器官を作り上げるために、そしてそれを動かし続けるために、必要とする豊かな幅の広い栄養素とエネルギー源を食べ物によって取り込みます。つまり生理的な欲求を充足させるために食べます。そして健康を保ちます。同時にそれは「心の成育」「家族との絆」「人と人との結びつき」そして「自然とのつながり」を知り、それをさらに強固にするための、とても人間的な営みでもあるのです。食べ物や料理は人の心をも形作っていくのです。
 動物は目の前にある食物に反射的に食いつきます。しかし意識的に自分の家族などのために、作り手の個性を伴った自分だけの料理を作るのは人間だけなのです。そこに家族の同心性(アイデンティティー)、個人の個性が育まれます。

>>>
次回へ続く。

2017年2月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28        
無料ブログはココログ