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日本産ワインへの私の考え

勿論多くの日本のワインを飲んだわけではありません。しかし、私の国産のワインへの印象は飲みたいとは思わないという一言に尽きます。飲んでも感覚の高ぶりを感じないのです。イル・プルーのお菓子教室に、あるのブドウ園の娘さんが通っておられました。そしてその親戚ではワインを作っておられました。あるときその方に日本のワインに対する考え方を述べました。そしてそのワイナリーの方は「確かにその通りだ。何とかフランスのようなワインをと思ってやってきたが結局できなかった」というように言っておられたそうです。ある時までは、私はその理由は気候と土に含まれるミネラルの幅と量の乏しさにあると考えていました。

しかし、1年ほど前に『ワインづくりの思想 醸造地神話を超えて』(麻井宇介著/中公新書刊)という本を読みました。そこには「ワインの特性は土によってすべて決まるのではなく、作り手の考え方、精神性によって作られる」とありました。とても興味深い内容で、日本の土がすべての原因ではなく、作り手の精神性さらに言えば日本人の国民性がフランスで飲むような感情の動きを感じるワインがつくることができなかったのかもしれないと思いました。

これはお菓子作りにおいても全く同じなのです。日本にはフランス菓子店というものが本当に多くありますが、真にフランス的な味わいを持つフランス菓子は私の店イル・プルーを除けば殆ど見つけることはできません。それは何故かと言えば日本人はその国民性の中に味わいの「多重性と多様性」というものをほぼ理解できないのです。長年フランスでお菓子作りを続けた人でも一度日本に帰り、自分の意志でお菓子を作り続けるとたちどころにフランスで作っていた「多重性と多様性溢れる味わい」を潜在的な日本人としての意識のもとにたちまち見失ってしまうのです。「多重性と多様性」とは様々な香り、食感、味わいを可能な限り、その味わいの中に投げ込み全体の調和、バランスを取るということです。つまりそれぞれの味わいの要素を出来るだけ取り除き単一、希薄な味わいを目指すのです。いわゆるすんだ味わい、繊細な味わいを無意識のうちに目指すのです。

無に近い繊細さを最上のものとしてしまいます。これは、今の日本酒の作り方、味わい和菓子、和食全ての職の領域に存在します。

しかし、大事なことは希薄な要素しか存在しないことが繊細さではないのです。様々な要素が豊かに重なり合って微妙なバランスがとられる。これが真の繊細さです。

例えば、前例のコンドリュー、正に人間の心の小さなきびにまで話しかける繊細この上ない味わいです。様々の豊かな要素が重なり合い要素間のバランスの上に味わいが成り立ちそして直接の感覚では見えないバランスの中に隠された豊かな要素が人間の感覚に働きかかけるからこそあの味わいの感動があるのです。

しかし、私もフランスから帰って日本でお菓子作りを始めた時にやはりいつの間にか様々な要素が希薄な味わいへの潜在的な衝動につかまれてしまいます。

そして、ここで100%近い菓子屋はここで止まってしまいます。

「多様性と多重性」を理解することなしに、形だけの希薄な味わいのフランス菓子をずっと作り続けるのです。私は、様々な理由により日本人としてはほぼ例外的にこの味わいの領域に辿り着くことができました。これはフランス料理の領域においても同じなのです。

前述の本を読んで私の考えは修正されました。私には殆ど感動を与えない日本のワインは土の質だけではなかったのです。味わいの「多様性と多重性」を理解することができれば確かにいくらでもあったのかと考えています。

例えば、土の中のミネラルがフランスと比べて幅と量的に乏しかったとしても、その土に様々の考えを駆使して土の中のミネラルの量と種類の豊かさは変えることができたはずです。

ブルゴーニュのオートゥ・コートゥ・ドゥ・ニュイの畑には雨が少ないために多くの化石が今も混在され、たまに降る雨がこの化石を溶かし土に豊かなミネラルを与えています。日本にも川に積もった貝の化石を含んだ全く自然な、豊かなミネラルを含んだ肥料が採れる所もあります。「多重性と多様性」を認識し、これを執拗に追い求めれば土はそのように変わっていくことも出来るのだろうとも考えます。


>>>続く

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