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第1章ワイン輸入黎明期 第1話:初めてのワイン輸入

 私はフランス菓子作りを一生の仕事としているパティスィエです。

 30代に2度ほど、パリの「ジャン・ミエ」で研修をしました。しかしこの頃は未だ、ワインの素晴らしさにはほとんど気づいていませんでした。

 1986年、39歳でフランス菓子店を開店後、数年してからようやく余裕が出来始め、年に1,2度はお菓子の勉強の為に渡仏するようになりました。この頃から私なりにワインの素晴らしさを本当に少しずつですが理解し始めました。

 そして40代後半からはかなりのめり込んだ状態でした。

 でも残念なことにフランスで飲むワインはあれほど旨いのに、日本で買って飲むフランスワインはとてもまずいのです。私も最初これは日本に輸入されてくるワインには酸化しないようにより多量の抗酸化剤が加えられているからだと考えました。そして次第に、どうしてもこのフランスで飲むあのおいしさを日本でも味わいたいという思いが強くなり、「よし、自分で抗酸化剤の少ない旨いワインを輸入しよう」と考えたのです。

 当時、既にフランス、スペインで自分の足と舌で探し当てた菓子作りの素材の輸入は何とか形になり始めた頃でした。

 ブルゴーニュのアルスナンのフランボワーズ、カシスなどの秀逸なリキュールを作り、供給しているジョアネさんは、ワインの審査委員もしており、ブルゴーニュのワインに広く精通していると聞きました。

 ジョアネさんに「抗酸化剤の極めて少ないワイン」を紹介してほしいと頼み、フランスへ行きました。

 この時紹介してもらったのが、これまでもたまにワインをもらっていたキャピタン・ガニュロとギィ・ボカールというドメンヌでした。

 その頃の私は、ワインの知識など全くなく、ただ旨いワインが日本で飲みたいという一心で行ったのですが、今考えればあまりにも向こう水でした。

 

 ともあれ、1回目、1200本ほど2つのドメンヌからワインをとりました。

 ドメンヌからル・アーブルの港までも、もちろん冷蔵コンテナで運び、日本までの船もリファ一定温輸送です。

 この1回目の輸入は偶然の積み重ねだったのでしょうが、とてもよい状態で日本に着きました。ワインを寝かせる間もなく飲み始めました。未だ日本に着いたばかりでは味わいもかなり変化していたはずですが、とにかく何を飲んでも旨く感じてしまいました。未だワインの味わいそのものも殆ど理解してしなかったということもあったと思いますが、味わいは長期の輸送によって変化していたにせよ、日本で飲むワインのように腐敗した状態ではありませんから、日本に着いたばかりでもそれなりに旨く感じたのでしょう。

 その時は保管の知識など全くありませんでした。とりあえず10℃ほどに冷えたところであればよいだろうと考えていました。ワインだけでなく他のものも一緒に置かれている一応冷房のある倉庫で保管しました。

 日本に着いてから時間の経過と共に、少しずつさらに味わいは深くなったように思います。

 売り始める前に自分が売るワインは全ての特徴を知りつくさなければならないと思い、狂ったように毎夜の試飲が続きました。旨いワインを手にした興奮で有頂天になっていました。そして売り初めまで400本を試飲してしまいました。多くの人が只々あきれていました。

 売り出し始めても士族の商法とやらで、それほど売れません。そうこうしているうちに翌年2月頃になるとワインが少しずつ良くない状態に変化し始めました。飲むすべての瓶に酢の匂いが出始め、味は口の中でムワッと広がる不快な酸味と共に濁り鈍重な不快な味わいになってきました。

 次第にそれは強くなり、3月、4月頃には、はっきりと品質の変化が分かるようになりました。もう以前の味わいではありません。何故急にワインが変化し始めたのか、原因は分かりません。多分、預けている倉庫がワイン専門のところではないので、保管場所に問題があるのだろうと考えました。


>>>続く

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