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第1章ワイン輸入黎明期 第3話:3回目のワインが到着

 今年こそは大丈夫だという大きな希望の下に3回目のワインが到着しました。

 早速、いつものように一通り試飲しました。コルトン・シャルルマーニュを除いてはっきりした異常は感じられませんでした。

 コルトン・シャルルマーニュは栓抜きを差し込むと、コルクがポロポロと崩れ、既に気の抜けたような、間の抜けた甘い味わいでした。悪い予感がしました。2ヵ月、3ヵ月経っても味わいは落ち着かず、ずっと同じような味わいが続き、とても飲んでもらうような状態ではありませんでした。

 コルトン・シャルルマーニュは味わいを繊細にするためにワインを樽に詰める時に牛乳、卵白を同時に樽内に入れ、それらにある種の成分を吸着させ、澄んだ味わいを作るのです。勿論牛乳の中には雑菌がいる訳ですから、それがリファーコンテナとはいえ、何らかの原因で輸送途中に異常に繁殖してワインの味わいを損ねたのではないかと考えました。私が飲んだ瓶が、本来のものとは違っていました。

 3ヵ月、4ヶ月とワインの味わいは少しずつ落ちついてきました。

 しかし予想に反して2回目の輸入時よりもっと早く、12月に飲んだ時には明らかに甘味が表面に出た鈍重かつ不快な味わいが出てきました。私は全く驚いてしまいました。そして翌年の1月、2月、3月とワインは正にどぶ水とも言えるほどに完全に腐敗変質し、キャピタン・ガニュロの優しい、流れるような深い味わいと長い余韻のイメージとは全く異なるものとなっていました。もう売れません。廃棄するしかありません。

 寺田倉庫の所長さんに店まで来てもらい、その旨を告げることにしました。

 私としては腐ったワインの賠償については少しも考えていませんでしたが、とにかく真実は伝えておかなければいけないと考えました。

 しかし彼は賠償を恐れ、寺田としては日本ではこれ以上考えられない最高の条件でワインを保存しており、こちらには責任はないとのっけに言われました。私は賠償の話のために来てもらったのではなく、事実を事実として伝えたいだけだと考えを述べました。

 確かに日本のソムリエは輸入ワインに関しては誰も正しい知識を持ち合わせておらず、腐ってレンガ色に変わっていくことをより良い状態への熟成としているのですから、日本のワインの常識の下では彼の言うことは間違いではないのです。

 それにしても、この寺田倉庫のワインの変質ぶりは突出していました。

 まさにどぶ水の味わいでした。このキャピタン・ガニュロのワインは、二酸化硫黄でさえも少なく、女性的な味わいでしたから、他のワイン以上に腐敗が進んだのでしょう。日本の高温多湿な気候に生息する微生物、腐敗菌は気温の低い冬季はじっと息をひそめていても、少しでも気温が上がればすぐに活発に動き出してワインを腐らせたということなのでしょう。冬季に庫内を暖めることによって微生物の活動はずっと活発で、他の倉庫より早くワインが著しく腐敗したのです。

 結局3度目の輸入も惨憺たるものになってしまいました。

もうここまで来ると、日本に到着後、あるいは輸送の段階で侵入した微生物による異常醗酵によってワインが変質するということはほぼ確定となっていました。

 

>>>続く

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