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2011年4月

弓田亨の昔カステラ

どんなパティスィエにも真似のできない
孤高の味わいのフランス菓子を作るパティスィエが作る
真の日本の味わいのカステラ

皆さんは最近、「日本の味、カステラ」を食べたことがありますか? 有名な文明堂、長崎の福砂屋、それらや巷の多くのカステラは昔の、少なくとも私が菓子屋の見習いに入った頃の味わいではありません。
カステラの作り方はとても単純です。そしてこれには生クリームもバタークリームも塗りません。正にスポンジケーキ、生地だけの味わいなのです。そこに、それぞれの店は自分の店だけのオリジナルの味わいを作るために、様々の、その店ならではの工夫を凝らします。使う砂糖は上白糖だけでなく、より香り、味わいのしっかりした茶色がかった麦芽糖の水あめを使います。そして蜂蜜を加えたり、また醤油を少量加えてその店独自のカステラを作ろうとします。そして歯ざわり、口溶けも力強く、素朴な、幸せを感じるおいしさでした。
本当に昔のカステラって、おいしかったんです。私も洋菓子の道に入ってからもずっと大好きでした。しかし、このカステラも、他の食べ物、飲み物と同様に、時代と共にあっけなく味わいの単純さに翻弄され、全く以前のものとは変わったものになってしまいました。より甘くなく、少しのざらつき感もなく、ただソフトさだけの単調さだけのカステラに突き進んできました。
いくつかの店のものを食べてみても、個性的な香りは皆無です。食感はただ滑らか。柔らかく。それだけです。味は全く平坦で、口に入れても何の楽しさも嬉しさもありません。正に今、日本の多くの食べ物や飲み物と同じように、口には出来るだけ何も感じない方がおいしいという、狂った嗜好によって作られているのです。

私はこの日本人の心を忘れたのっぺらぼうな味わいのカステラは、極めて異常な、人間性を喪失した食べ物であり、人の心と身体に幸せを与える本来のおいしさではないことを皆さんに提示したかったのです。

私が菓子屋になった和洋菓子店の和菓子の職人さんが作るカステラの切れ端はよく食べていました。カステラの配合は、卵と砂糖の量が同じであり、その半分が粉であることを覚えています。この記憶だけを基に、カステラの試作が始まりました。他の店のレシピを参考にすると型にはまったものしか作れないと思ったからです。
まず卵と砂糖を同量にして、粉をその半分にして焼いてみる。そして食べる。少し歯に粘る。粉を5%ずつ減らして、少しずつその粘りをとっていく。ある程度にくると、私のイメージの中の歯ざわり、口溶けに近づいてくる。しかし焼き上がった生地のスダチが粗く、歯ざわりも、どうも少し粗い。砂糖の分量を5%ずつ減らし、スダチを細かくしていく。酒、水分の量は何%まで生地にしっかりと吸収されるかなどを確認していく。そして香りを立てるために、日本酒やキルシュを少量加えたりする。何度かやってキルシュはカステラには合わないことを知り、振り出しに戻る。それではシナモンを少し加えよう。適量を決定するために、さらに2~3度の試作が続く。こんな具合にして、26回目の試作でようやく私がほぼ納得するものが出来ました。

何もないところから試作を始めたのは私の五感にピッタリ重なるカステラが欲しかったからです。でも試作も15回目を過ぎると、全体が把握できない状態になります。頭の中がグチャグチャになりましたが、私のたった一つの取り得、並みではないしつこさと、試作を手伝うスタッフ山﨑の正確な記録、大きなアドバイスが何度となく私を支えてくれました。

甘さに豊かな味わいと力を加えるために、糖分は上白糖、玄米水あめ、赤砂糖、味・香りの強いフランス・プロヴァンスの百花蜜の蜂蜜。これだけの種類の甘みを加えます。香りも、ろ過していない味わいの強いにごり酒、シナモン、ナツメグを加え、香りに力を与えます。そして私ならではの技術によって焼き上げます。26回目の試作で出来た「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌのカステラ」、巷のものと比べれば、そのおいしさの違いはあまりにも大きいです。

香りも、歯ざわりも、味も、幾重にも重ね、作り上げた、正に「孤高の味わいのカステラ」なのです。私はフランス菓子を作るパティスィエですが、心と身体が喜び、幸せにする食は、和菓子、家庭料理、全て同じです。
特に和菓子は有名店も無名店もすべて、味も食感も感じられぬほどに薄っぺらに単純化し、弱くすることが最上の繊細な味わいと考えています。どら焼き、まんじゅう、大福、桜餅、決して食べる人に喜びと幸せをもたらさない人間性を喪失した形式的な味わいに侵されています。和菓子の世界にも人間性が復興されなければなりません。私のカステラは、その先鞭となるものと思います。

是非、食べる人の喜びと幸せのためのカステラを一度、お試しください。

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帽子

私達イル・プルー・シュル・ラ・セーヌでは、本当に小さな喫茶室ですが、着席し、お菓子をお召し上がられる場合は、帽子などを取って頂いています。これは次のような考えによるものです。

 

日本人は、かつては礼儀正しく、正義を重んずる国民でした。しかし、今の日本人の心と身体は荒廃しています。電車で、しかも優先席で、目の前に老人や妊婦が立っていても、全く無視。席を譲ろうという素振りも気配も感じられません。全く情けない国になってしまいました。

歩いていて自分の持っているバッグが人に強く当たっても知らんふり。朝の電車の中で肉まんを食べるお嬢さん。恥も外聞もなく化粧をしている女性達。食事の時に足を組む人達。一体、かつての日本の心はどこに行ってしまったのでしょうか。

 

どんなに時代は変わっても、失っても、変わってはいけないものがあると思います。

 

昔は日本では、室内に入ればかぶり物は取る、そして座って食べる時は決してかぶり物をつけたままなどということはありませんでした。

最近は寿司屋さんや居酒屋さんでは帽子をかぶったままは当たり前。若い人だけではありません。4060代のおじさんまでが、若ぶってか、若者のすることに理解があるところを見せたいのか、堂々と帽子をかぶったままの食事です。とても嘆かわしい。ここはアメリカではありません。日本なのです。アメリカや他の国の習慣を真似をすることはありません。

日本人がずっと培ってきた「日本の形」というものがあるのです。これすら守れなくて、正義感に富んだ弱者に対して優しい、思いやりのある国民にはなれるはずがありません。私達は戦後、特にバブル経済期には、経済的価値のあるものだけが大事にすべきものであり、それ以外のものは、他人や弱い人への思いやり、優しさ、助け合う心など、日本人としての固有のものであっても全く価値を持たないものであり、守る必要のないものだと考えてきました。そして人と人のつながりや正義感、礼儀が失われてきたのです。

 

私達が本当に一生懸命に作ったお菓子が、私達の喫茶室で、帽子をかぶったままで食べられる。これほど私にとって不快なことはありません。私達のお菓子作りの考え方と、日本の心、礼儀を大切にしたいと言う考えは表裏一体なのです。私達のそんな考えを理解して頂ける方々に私達のお菓子を食べて頂ければこれほど嬉しいことはありません。また、私共の考えが理解できない方は、決して私達のお菓子の味わいを深くは理解されることはないと思います。

 

想像も出来なかった東日本大震災が日本を襲いました。この危機が、バラバラになってしまった日本人の心を一つにまとめてくれるだろうと言われています。しかし阪神淡路大震災の時も同じことが言われました。でも日本人の心は少しもまとまらず、益々バラバラになってきました。

日頃から日本のあるべきものを大事にする。自分より弱い人達には気づかう。このような心が常日頃から大事にされていなければ、今、被災者を思う心も、やがて時間と共に希薄になり、元の、人々が疎遠な社会に戻ってしまうように思えてなりません。

 

残したい、守りたい味わいは、作り手と食べ手のお客様のお互いの考え方の理解も無ければ長く保つことは出来ません。私達はそんな思いで日々お菓子を作り続けています。

 


(2013.8.19追記)

ファッションで帽子をかぶっている方は勿論とっていただくことにしておりますが、病気などご事情があって帽子をかぶられている方に関しては、帽子をとることを強制しておりませんので、どうぞご安心してお店にいらしてください。

私共が支援プロジェクトを行っている「会津食のルネッサンス」より

私共が支援プロジェクトを行っている、
「会津食のルネッサンス」の本田勝之助氏が、
風評被害に悩む福島の野菜を購入し、
その野菜で会津の避難所の方々に炊き出しをする
という野菜の詰め合わせセットを販売しています。

同じ「食」の道に有る者同士、
私共も、ささやかながら協力させて頂きました。

以下、pray for Japan 野菜詰め合わせセットの概要です。

被災者の皆さまは毎日カップラーメンなどのレトルト食品や、
おにぎりや菓子パンなど単調な食事が続き体調を崩される方も増えています。
おかずや生ものの要望はあれど、被災地へ送るとなると大変です。
そんな中、弊社では地域の農家様と協力して、原発の影響のないお野菜を避難所の皆さまに届けます。

状況によってお詰めする野菜は異なりますが、3000円相当の野菜を詰め合わせにして、炊き出し可能な避難所へ届けます。

ぜひ、皆様もご協力頂けましたら幸いです。
http://www.keisyoumai.com/?pid=30485329

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