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2010年12月

プティ・ショコラについて

Jpg

果たして日本にどれだけチョコレートの味わいを知っている
パティスィエやショコラティエがいるのでしょうか?

ほとんどの日本のパティスィエやショコラティエがフランス、ヴァローナ社のチョコレートが最もおいしいと思っています。
自分の舌でそう感じているからではありません。日本の名のあるプロがそう言っているからです。しかしそのプロはチョコレートの味を知っているのかと言えば、そうではありません。フランスで有名なショコラティエが言っているからとか、そんな理由に過ぎません。フランス人は、日本と比べれば小さい頃からチョコレートをかなりたくさん食べていることは事実ですが、多く食べているから味が分かっている訳ではありません。多くのフランス人パティスィエやショコラティエもヴァローナのチョコレートをおいしいと思い込んでいるのですから。

日本の真似なんでしょうか。最近フランスでは味わいの薄いチョコレートが好まれているように思います。でもやっぱりチョコレートは深い味わいと、口に入る前、噛んでいる時、噛み下してからの香りなんですよ。

フランスは今、週35時間労働のため時間が足りません。味わいを深めるためでなく、手を抜いて時間をかけないで効率を上げるための技術がもてはやされているのです。
そして、加熱した生クリーム、チョコレート、その他を混ぜ込んでクレーム・ガナッシュを作る時でも、手っ取り早く出来るフードプロセッサーで作ってしまいます。
でもフードプロセッサーはとても力が強くて様々の素材が混ざりすぎ、それぞれの素材の個性的な味わいが消えて、平坦になってしまいます。そして料理やお菓子と同様に見てくれや、奇をてらった形だけの味わいが幅を利かせています。
昔ながらに、本当の手作りでやっているところは確かにとてもおいしいところはありました。
しかし特に最近、新しく名の売れてきたショコラトゥリーは、かつてはフランスが大事にしていた味わい、野生味と繊細な味の組み合わせをもう忘れてしまったように思えます。
味わいのはっきりしないボケた味のプティ・ショコラを作っているように思えます。でも日本人は、“フランスで作られた”ただそれだけで有難がって味わいの真贋を確かめようとはしません。

*イル・プルー・シュル・ラ・セーヌのプティ・ショコラのラインナップはこちらをご覧ください。
http://www.ilpleut.co.jp/gateaux/chocolat/index.html

チョコレートの体系は既に数十年前に築かれています。
三十数年前までスイスにコバという素晴らしい製菓学校がありました。
そこで学ばれたドイツ人パティスィエに私は初めてチョコレートを教わりました。
当時は国産の味わいの劣るチョコレートで作っていましたが、それでも目鼻立ちのはっきりした、個性的かつ印象的な味わいのプティ・ショコラばかりでした。
初心者ながら本当においしいと思いました。
もうこの時期に、チョコレートは味わいとしては確固とした体系が築かれていたのです。今あるフランスのチョコレートはかつての味わいから進化されているとは思えません。フランスの時代背景と共に実にしまりのない曖昧な味わいになっているような気がします。
フランスの有名シェフの店のプティ・ショコラをもらって食べることがありますが、本当に心打たれるおいしさはほとんどありません。
食べる人に喜びと幸せを与えるためではなく、マスコミに気に入られるような奇をてらった、素材の組み合わせとか形だけにうつつをぬかしているショコラティエが多いような気がします。
これは料理も、お菓子も、ショコラも、同じなのです。

イル・プルー・シュル・ラ・セーヌのショコラは、
五感に強く迫る、本来のショコラの味わいを作ります。

教室の生徒さんとフランスのオーベルニュ地方の町イッサンジョーの国立製菓学校で研修旅行に何度か行きました。
同じ週にMOF(フランス最高労働者賞)のショコラティエの技術講習会があり、食事のデザートとして何度かそこで作られたプティ・ショコラが出ました。もちろん、まずいということはないのですが、味わいにメリハリがなく、少しも印象的な味わいではない。まぁこんなものかなと思います。
日本に帰ってきて、ちょうどイル・プルー・シュル・ラ・セーヌのお菓子教室でショコラの授業がありました。終わってから自分の作ったプティ・ショコラを食べてみます。これがやっぱり旨いんです。とにかく味わいに曖昧さがない。作り手(私)の意図する味わいがしっかり表されています。しっかりと、鼻と舌に香り、味わいが焼きつけられるのです。一個の満足感がとても大きい。でもこれは実は当たり前のことなんです。

イル・プルー・シュル・ラ・セーヌのショコラの味わいは、コバ製菓学校の味わいの体系をイメージに置き、印象的な味わいを作り出そうとする意志がしっかりとあります。
そして何にでもフードプロセッサーを使うことなどしない。
私達の技術はどうやって短時間で終わらせるかのための技術ではなく、常により深いおいしさを作り出すためにだけ、技術があります。
そして、フランス・ペック社のチョコレートやプラリネがあります。とにかくここのチョコレートは味わいに芯と力があり、深い味わいを持っています。

ペック社はパリ郊外サンジェルマン・アン・レイに近い住宅地にある年産1000トンの小さな、正に手作りのチョコレートの会社です。社長のデルシェさんはチョコレートに深い知識を持ち、自社が作るチョコレートに絶対的な自信と誇りを持っています。
そしてアフリカや南米に、少量ではあるが個性的で印象的な味わいのカカオ豆を買う強いコネクションを持っています。デルシェさんは卓越した味わいの感覚に従ってカカオ豆をブレンドし、個性的な味わいを作り上げ、品質管理にも最善を尽くします。
よくあるように日本向けに手抜きの品質のものを送るなんて汚いことはしません。
ホワイトチョコレートはカカオ豆から抽出したカカオバターに、暖かくふっくらとした味わいの、サトウキビから出来た砂糖と、フランス・ランデ地方の豊穣の極みとしか表現のしようがない全脂粉乳を使います。とにかく両の頬に暖かく人懐こく語りかけるおいしさは凄すぎます。
生菓子を作る時でも、生クリームにこのホワイトチョコレートを生クリームの30%ほど加えると、日本の無味乾燥な味わいの生クリームもフランスの物と同じくらいに感動的においしさが増します。
スイートチョコレートのクーヴェルチュールは、イル・プルー・シュル・ラ・セーヌでは3種類をとっています。
芯のある印象的に香りを放つスーパーゲアキル。上品に穏やかなふっくらとしたバランスのあるアメール・オール。香り味わいに朴訥な暖かい味わいを持つペルー。
いずれもがはっきりした役どころの違う、しっかりした力強い個性を持つもので、ガナッシュを作っても味わいのガサツな日本の生クリームに負けずに、はっきりと自分を主張します。

プティ・ショコラだけでなく、ペック社のチョコレートを使うことによって、様々のお菓子の表情が蘇り、私のチョコレートのお菓子へのイメージと実際の味わいとの隙間を完全に埋めることが出来たのです。

さらに私達にはフランス・アルザス地方、ルゴルさんの神様の手を借りたとしか思えないリズムを持って頭を突き抜ける香りのキルシュ、ブルゴーニュのジョアネさんの神が与えた豊穣をたたえたリキュールがあります。
オーソドックスなチョコレートの本質を捉えたレシピ、ペック社のチョコレート、秀逸なるオ・ドゥ・ヴィ、リキュール、世界で最も深い味わいを持つスペイン・カタルーニャ地方のアーモンド。そしておいしさのために全てを注ぎ込む私達の意志。
イル・プルー・シュル・ラ・セーヌのショコラはおいしくて当たり前なのです。

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